第15話 80万円借りられても、まだ金が足りなかった

そんなわけがなかった。

金に余裕があれば、

レートを守って冷静に勝負できる。

負けても追いかけず、

コツコツやればいい。

頭ではそう考えていた。

でも、

実際にギャンブルを始めれば別だった。

負けが続く。

取り返したくなる。

賭ける金額が上がる。

最初に決めたはずのレートなんて、

熱くなった頭の前では簡単に崩れた。

そして、

増えた枠も少しずつ減っていった。

「自分なら種銭さえあれば勝てる」

という考えは、

ただの空想だった。


とはいえ、

増えた枠をその場ですべて使い切るようなことはしていなかったと思う。

必要になったら、

数万円借りる。

また必要になれば、

もう一度借りる。

一回一回は、

そこまで大きな金額ではない。

だから、

自分が大きな借金を作っている感覚も薄かった。


モビットは、

コンビニATMでカードを使えた記憶がある。

金が必要になれば、

近くのATMへ行く。

一方、

アコムでは店舗のATMへ何度も行った。

駅前の店舗。

別の駅の店舗。

何度通ったのか、

もう分からない。

初めて契約するときには、

誰かに見られないかと周囲を気にしていた。

それが、

いつの間にか

「金が必要だからATMへ行く」

という普通の行動になっていた。


一度に20万円借りるのは怖い。

でも、

2万円なら借りられる。

また別の日に3万円。

さらに必要になれば数万円。

そうやって使っていけば、

80万円という大きな数字も、

一度に背負ったようには感じない。

目の前の不足を、

その都度埋めているだけ。

そんな感覚だった。

でも、

不足する原因は何も変わっていない。

収入が増えたわけでもない。

ギャンブルをやめたわけでもない。

借りられる上限だけが増えていた。


大学4年生になるころには、

記憶では三社合わせて80万円ほどの枠があった。

そして、

ここまでの自分を考えれば、

大きな未使用枠を残したまま生活していたとは思えない。

金がなくなれば借りる。

借りられるなら使う。

増枠されれば、

「これでしばらく大丈夫」

と思う。

でも、

その「しばらく」は長く続かなかった。


今なら分かる。

80万円近くまで借りられるようになっても金が足りない時点で、

必要だったのは、

さらに金を増やすことではなかった。

使い方を変えることだった。

ギャンブルを止めることだった。

でも当時の私は、

足りないなら、

また金を作ればいいと考えた。

そして大学4年生。

借りられる枠がここまで増えても、

それでも金は足りなくなった。

そのころ、

私の手元にはまとまった金があった。

自由に使っていい金ではない。

大学に支払うために預かっていた学費だった。

絶対に手をつけてはいけない。

それくらいは分かっていた。

それでも私は、

次にその金へ手を出すことになる。

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