第12話 借金なのに、「助かった」と思った

20歳になってしばらくして、また金に困った。

何に必要だったのかは、もう覚えていない。

家賃だったのかもしれないし、ほかの生活費だったのかもしれない。

ただ、このころ金が足りなくなる理由はだいたい同じだった。

生活費を払って、残った金でギャンブルをしていたわけではない。

順番が逆だった。

先にギャンブルをする。

そのあとで、払わなければならないものに気づく。

そして、

「金が足りない」

となる。


そのとき、19歳のころに調べたことを思い出した。

金に困って、ほかに借りられる会社がないか探したことがある。

検索すれば、大手の消費者金融はいくつも出てきた。

ただ、そのときの私はまだ19歳だった。

申し込み条件を見ると、

「20歳以上」

そこで終わっていた。

別に、20歳になる日を心待ちにしていたわけではない。

「20歳になったら絶対に借りよう」

と決めていたわけでもなかった。

だから20歳になった瞬間、すぐ申し込んだわけではない。

金に困ったとき、

ふと思い出した。

そういえば、もう20歳だから申し込める。

それだけだった。


記憶では、申し込んだのはモビットだったと思う。

スマホから申し込みをした。

そのあと、私は駅前にいた。

なぜ駅前だったのか。

そこまでは覚えていない。

ただ、

電話がかかってくるのを駅前で待っていた光景は、今でもはっきり覚えている。

申し込み後の案内に、

確認の電話が来るようなことが書かれていたのだと思う。

スマホを持ちながら、

電話を待っていた。

緊張していたのか。

不安だったのか。

そこまではもう思い出せない。

ただ、手続きは思っていたよりもあっさり進んだ記憶がある。

審査について何を聞かれたのかも、

最初にどうやって金を受け取ったのかも、

細かいところは残っていない。

後にカードを持っていたことだけは覚えている。

そして、

記憶では10万円ほど借りられるようになった。


そのとき感じたのは、

「借金が増えてしまった」

という恐怖ではなかった。

助かった。

たぶん、それが一番近い。

金がない。

払わなければならないものがある。

そこに10万円ほど使える金が現れた。

だから、

助かったと思った。

もちろん実際には、何も助かっていない。

借金が増えただけだ。

しかも、その原因になった金の使い方を変えたわけでもない。

それでも目の前にある問題だけは、

一度消えたように見えた。


さらに厄介だったのは、

必要だった金額以上の枠があったことだった。

仮に数万円足りなかっただけだとしても、

10万円借りられる。

そうなると、

残った金を

「借金だから使ってはいけない金」

とは考えられなかった。

使える金が増えた。

また、そう感じてしまった。

最初に借りた学生向けローンでも、

限度額が増えるたびに似たような感覚になっていた。

それでも学習しなかった。

金融会社が変わっても、

自分の金の見方は変わらなかった。


そもそも、

生活費が足りなくなったから借りた、

という説明だけなら間違ってはいない。

でも、それでは一番大事な部分が抜けている。

なぜ生活費が足りなくなったのか。

先にギャンブルをしていたからだ。

もし給料が入ったときに、

家賃や携帯代など必要な支払いを全部済ませて、

残った金だけで遊んでいたら、

ここまで簡単には借金を増やさなかったのかもしれない。

でも私は、

手元に金があれば先に使った。

そして後から困る。

困ったところに消費者金融が現れる。

すると、

「助かった」

と思う。

問題を解決したのではなく、

次の給料や、その先の自分に問題を押しつけただけだった。

それを、このころの私はまだ理解していなかった。

20歳になって、

自分で馬券を買えるようになった。

同時に、

19歳では申し込めなかった大手の消費者金融にも申し込めるようになった。

私にとって20歳は、

できることが一気に増えた年だった。

その自由を、

私はかなり悪い方向に使い始めていた。

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