第8話 5000円返して、3000円借りる

19歳になるころには、最初に借りた学生向けローンの限度額10万円は、ほとんど使い切っていた。

毎月、返済はしていた。

たしか5000円くらいだったと思う。

5000円返す。

普通なら、それで終わりだ。

借金が少し減った。

来月また返そう。

そう考えるものだと思う。

でも、当時の私は違った。

5000円返すと、そのうち3000円くらいはまた借りられるようになる。

すると、その3000円を借りる。

5000円返して、3000円借りる。

それを繰り返していた。

今振り返ると、

何のために返済していたのか分からない。

借金を減らすために返しているのに、

返済した直後にまた借りる。

結果として、借金はほとんど減らない。

それでも当時は、

「返済しているから大丈夫」

という感覚があった。

延滞しているわけではない。

毎月決められた金額を払っている。

だから、自分はちゃんとやっている。

そんなふうに思っていた。

でも実際には、

返済によって空いた数千円の枠すら、

そのまま残しておけない状態だった。

3000円。

今なら、

「たった3000円くらい借りずに済ませればいい」

と思う。

でも、その3000円が必要だった。

生活費に使うこともあった。

遊びに使うこともあった。

そして当然、

ギャンブルにも使った。

余裕がなかったのか。

判断がおかしくなっていたのか。

たぶん、両方だったと思う。

アルバイトをして給料は入っていた。

それなのに、

返済で空いた3000円まで借りなければ金が足りない。

普通に考えれば、

かなり危ない状態だった。

でも、

その時の私は「危ない」とは思っていなかった。

むしろ、

3000円借りられるなら、3000円ある。

そんな感覚だった。

借金の枠は、

完全に自分の財布の一部になっていた。

そして当然、

それだけではギャンブル欲は満たされなかった。

5スロならまだ多少遊べる。

でも負ければ終わる。

20スロなら3000円なんて、あっという間になくなることもある。

もっと打ちたい。

もっと金が欲しい。

でも借りられる金は、もうほとんど残っていない。

限度額10万円。

そこまで使い切っている。

返済して少し枠が空いても、

またすぐ借りる。

だから、

使える金が増えることはなかった。

このころから、

私は少しずつ別のことを考えるようになった。

「ほかにも借りられるところはないのか」

最初の会社で借りられる額には限界がある。

なら、

別の会社から借りればいい。

一度借金を経験してしまった自分にとって、

その発想自体には、もう大きな抵抗はなかった。

問題は、

借りる勇気ではなかった。

貸してくれる会社があるかどうか。

まだ20歳にもなっていない学生だった私にとって、

次の借入先を見つけるのは、

思っていたよりずっと難しかった。

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