第13話 借金総額より、「あといくら借りられるか」を見ていた

20歳になって、大手の消費者金融からも借りられるようになった。

最初に契約したのは、たしかモビットだった。

そこで借りた金も、長くは持たなかった。

正確にどれくらいの期間だったのかは覚えていない。

数週間だったのかもしれない。

もう少し持ったのかもしれない。

ただ、大学4年生のころには三社から借りていた記憶がある。

少なくとも、学生ローンとモビットの二社だけで何年も済んでいたわけではない。

借りた金が減っていく。

残りの枠も少なくなる。

そうなると、また別の会社を探すようになった。


もちろん、新しい会社に申し込むことに、まったく抵抗がなかったわけではない。

一社増える。

それくらいの意味は、自分でも分かっていた。

だから、

「じゃあ次」

と、その日のうちに別の会社へ申し込んでいたわけではない。

少しの間は粘る。

給料日を待つ。

返済して空いた枠を使う。

それでも金が足りなくなると、

また借りられる会社を探す。

そして次に申し込んだのが、アコムだった。


契約したのは、駅前にあった無人契約機だった。

店の前まで行って、

周りを見る。

知っている人はいないか。

誰かに見られていないか。

あそこに入るところだけは、見られたくなかった。

大手消費者金融の看板がある。

そこへ自分から入っていく。

知り合いに見られれば、

何をしに来たのかはだいたい分かる。

借金をしていることは、

誰にも知られていないつもりだった。

だから周囲を気にしながら、無人契約機へ入った。

それでも、

入るのをやめて帰ろうとは思わなかった。

当時の自分には、

「ここで借りなければ、もうどうしようもない」

くらいの感覚があったのだと思う。

自分は追い詰められている。

借りる以外に方法がない。

そんなふうに思っていた。

でも、今から見れば、

それ自体が勘違いだった。

この後も私は、新しい借入先に手を出すたびに似たような気持ちになる。

「今回が最後」

「ここがラストチャンス」

そのたびに、自分では崖っぷちに立っているつもりだった。

でも実際には、

そこはまだ十分に引き返せる場所だった。

それに気づくのは、

十年以上も後になる。


このころには、ギャンブルの中心も変わっていた。

20歳になるまでは、パチンコやスロットが中心だった。

20歳になってすぐに、ネットで地方競馬を買えるようにした。

そこからは、日中に金があれば地方競馬を買っていた。

大学にいるときも買う。

家にいるときも買う。

バイトがない日はパチスロを打ちに行く。

そしてパチスロを打っている最中も、

スマホでは地方競馬を買う。

目の前ではスロットが回っていて、

手元では次のレースを買っている。

一つのギャンブルをしながら、もう一つのギャンブルをしていた。

金を使う速度が遅くなるはずがなかった。


それでも、このころは返済を遅らせてはいなかったと思う。

毎月の支払いはする。

だから自分の中では、

まだ大きな問題にはなっていなかった。

ただ、

借金が全部でいくらあるのかを気にしていた記憶はあまりない。

学生ローンがいくら。

モビットがいくら。

アコムがいくら。

全部合わせればいくらになるのか。

そうやって総額を出して、

「こんなに借金がある」

と考えることはほとんどなかった。

私が見ていたのは、もっと目の前の数字だった。

今月はいくら返せばいいのか。

そして、

あといくら借りられるのか。

その二つだった。


たとえば限度額が10万円で、

8万円使っていたとする。

普通なら、

「借金が8万円ある」

と考えるのだと思う。

私が気にしていたのは、

「あと2万円使える」

のほうだった。

返済日が来れば数千円を払う。

すると、少しだけ枠が戻る。

借金が減ったことより、

また使える金が増えたことのほうが重要だった。

会社が一社増えれば、

返済先も増える。

でも同時に、

使える枠も増える。

総額を見なければ、

借金が増えている実感は薄い。


このころの私は、

複数の借金を抱えているというより、

複数の財布を持っているような感覚だったのかもしれない。

給料が入る口座。

学生ローン。

モビット。

アコム。

それぞれに、

「今いくら使えるか」

がある。

足りなければ別のところを見る。

返済して枠が空けば、また使う。

まだ延滞もしていない。

毎月払っている。

だから、

なんとか回っているように見えた。

実際には、

返済能力が上がったわけでも、

収入が増えたわけでもない。

借りる場所が増えただけだった。

それでも私は、

まだ回せていると思っていた。

この先、

新しく借りられる場所がなくなるまでは。

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