第31話 友人から20万円借りて、旅行に行った

少し遡って、

大学卒業が近づいたころ、

私は友人から、

20万円ほど借りた。

就職先は決まっていた。

卒業までには、

まだ少し時間があった。

そのころ、

友人と旅行へ行こうという話になった。


私は、

金がないと言っていた。

それでも、

友人は一緒に行きたかったのだと思う。

最終的に、

友人から金を借りて、

旅行へ行くことになった。

その場で、

確か現金で、

20万円ほど受け取った。

そして、

借用書も書いた。


返済期限までは、

決めていなかった。

ただ、

毎月1万円くらいずつ返す。

そんな約束だったと思う。

さらに、

借用書には、

返済が滞った場合、

祖母へ連絡してもいい。

そこまで書いた。

貸す側からすれば、

貸し倒れになるのは困る。

私も、

就職すれば返せると思っていた。

だから、

その条件を受け入れた。


旅行は、

関東から関西方面へ向かう、

3泊4日の旅だった。

在来線を使って、

かなり長い距離を移動した。

途中で何か所か泊まりながら、

西へ進んだ。

そして、

その旅行中にも、

私は地方競馬をしていた。


借りた20万円すべてが、

旅行代に必要だったわけではない。

余った金もあった。

その金で、

競馬をする。

当たれば、

早く返せる。

友人からも、

そんな話をされていた。

もちろん、

そんな都合よくはいかなかった。


帰る日になって、

友人は、

「在来線で帰るのはしんどい」

と言って、

先に新幹線で帰った。

私は、

一人で帰った。

本当に疲れていただけなのか。

それとも、

もう少し前から、

私にうんざりしていたのか。

今となっては分からない。


就職してからは、

最初のうちは返していた。

20万円あった借金は、

十数万円まで減った。

でも、

そのうち、

返済が止まった。

金がなかった。

催促の連絡も来た。

私は、

それを無視するようになった。


そして、

無視したのは、

その友人だけではなかった。

共通の友人からの連絡も、

全部無視した。

それまでは、

一緒に遊んでいた人たちだった。

ゲーセンで知り合った友人たちだった。

でも、

借金を返せていない相手がいる。

その共通の友人たちと、

普通に遊ぶことなんてできなかった。


結果として、

私は、

金だけではなく、

人間関係まで失っていった。

それまで通っていた場所にも、

行きづらくなった。

友人に会う可能性がある場所を、

避けるようになった。


借金を返せない。

だから、

連絡を見ない。

人にも会わない。

行く場所まで変える。

このころには、

金の問題が、

少しずつ生活そのものを狭くしていた。

そして、

借用書に書いたあの一文が、

現実になる。

返済が滞ったら、祖母に連絡してもいい。

私は、

そのことをほとんど考えないまま、

連絡を無視し続けていた。

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