第18話 借金を返すために、ギャンブルを「真面目に」やろうとした

学費を使い込んだことを祖父に打ち明け、

大学への支払いは何とか済ませることができた。

でも、

消費者金融から借りている金のことは話せなかった。

祖父から、

「ほかに借金はないのか」

と聞かれたのに、

私は隠した。

だから、

学費の問題が片付いたあとも、

自分の中には別の問題が残ったままだった。

この借金を、どうにかして返さなければならない。


そこで私が考えたのは、

ギャンブルをやめることではなかった。

むしろ逆だった。

もっと真面目にギャンブルをやろう。

そう思った。

これまで負けてきたのは、

適当にやっていたから。

熱くなって、

レートを上げて、

その場の感情で勝負していたから。

だったら、

そこを直せばいい。

今までよりきちんと考えて、

ルールを守ってやれば、

借金くらい返せる。

本気でそう思っていた。


地方競馬では、

前日から予想するようにした。

レース映像を見る。

気になった馬をメモする。

当日になってから適当に買うのではなく、

前もって考える。

そして、

一番意識したのはレート管理だった。

負けたからといって、

次のレースで一気に取り返そうとしない。

決めた金額の範囲で買う。

それを続ければいい。


パチスロでも同じだった。

狙ったのは、

期待値のある台だけを打つこと。

どの状態なら打てるのか。

どこまで回せばいいのか。

そういう数字を自分なりに整理して、

ノートにまとめようとした。

期待値稼働を徹底すれば勝てる。

そのための自分専用の資料を作ろうとした。

ただ、

そのノートは結局完成しなかった。

今思えば、

そこも自分らしい。

「ちゃんとやろう」

と思っている間は、

かなり真面目に取り組む。

でも、

それを長く続けるところまではいかない。


それでも最初の数日は、

以前より落ち着いていたと思う。

地方競馬でも、

決めたレートを守る。

パチスロでも、

期待値を意識する。

少しくらい負けても、

「これは長い目で見れば問題ない」

と考える。

ギャンブルの期待値というもの自体は、

理解していた。

だから、

数日の負けで全部を崩してはいけないことも分かっていた。


問題は、

負けが数日では終わらなかったときだった。

負ける。

また負ける。

さらに負ける。

そうなると、

少しずつ冷静ではいられなくなる。

このまま同じ金額で続けていて、

本当に借金を返せるのか。

もっと早く増やさなければいけないんじゃないか。

そう考え始める。

そして、

決めていたレートが崩れる。

賭ける金額が増える。

パチスロでも、

最初に決めていた基準から外れた台を打つ。

気がつけば、

いつものやり方に戻っていた。


結局、

一週間かそこらだったと思う。

「今度こそ真面目にやる」

と決めた自分は、

あっという間にいなくなった。

知識がなかったわけではない。

期待値も、

レート管理も、

理屈としては分かっていた。

でも、

負けて熱くなった自分に、その理屈を守らせることができなかった。

自分なら、

種銭さえあれば勝てる。

ちゃんとやれば勝てる。

そう思っていた。

実際には、

種銭が増えれば、

負けられる金額が増えただけだった。


そして祖父母には、

借金のことを隠したままだった。

表向きは、

学費の件で反省した孫。

でも裏では、

まだギャンブルを続けている。

借金も残っている。

その後ろめたさは、

少しずつ人付き合いにも出ていたのだと思う。

自分から連絡する回数が減る。

会いに行く回数も減る。

何かを聞かれるのが嫌だったのかもしれない。

自分でも気づかないうちに、

隠し事がある相手から距離を取るようになっていた。


このころの私は、

社会人になれば全部解決する、

とも特に思っていなかった。

給料が増えれば、

多少は楽になるとは思っていた。

でも、

すでに三社から借りている。

これ以上、

新しい会社から借りられるとも思っていなかった。

だから、

今ある借金をどうにかするしかない。

そう考えていた。

もちろん、

その後の私は、

まだまだ新しいところから金を借りることになる。

このときは、

そんなことになるとは思っていなかった。

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