第36話 700,000円あったのに、、、

700,000円を当てたあとも、

私は地方競馬を続けた。

翌日も、その次の日も。

何度か大きく当たった。

それでも、

残高は減っていった。


記憶では、

2週間から3週間ほどだったと思う。

気づけば、

また金がなかった。

ここでいう「金がない」は、

少し節約しよう、

というレベルではない。

明日の昼ごはんをどうするか考える。

私にとっての「金がない」は、

そこまで行く。

少し前まで、

700,000円もあったのに。


使った金のほとんどは、

地方競馬だった。

多少は借金も返した。

生活費にも使った。

パチスロも打った。

でも、

あとから強く後悔する程度にしか、

返済には回さなかった。


そして、

残高が減ってきても、

賭け金はなかなか元に戻らなかった。

理由は単純だった。

700,000円に戻したかった。

一度700,000円を持ってしまったことで、

そこが新しい基準になっていた。

それまでなら十分だった金額を見ても、

「まだこれだけある」ではなく、

「もうこれしかない」

と思うようになった。


ギャンブルをする人なら、

似た感覚になったことがある人もいるかもしれない。

小さな勝ちなら、

そこまで感覚は変わらない。

でも、

一度大きく勝つと、

その金額が頭に残る。

減ってくると、

負けているわけではないはずなのに、

取り返したくなる。

少なくとも、

私はそうだった。


残りが少なくなっても、

その中から数万円を賭ける。

当たれば、

また700,000円に近づける。

そんなことを考えていた。

今なら、

かなり無謀だったと分かる。

でも、

普段からやっていたことの、

金額が大きくなっただけでもあった。


当たることもあった。

それでも、

一度も大きく増えることはなかった。

そして、

700,000円はほとんどなくなった。


絶望した。

本来、

その700,000円は、

少し前まで持っていなかった金だった。

それなのに、

一度手にしたあとで失うと、

喪失感はものすごく大きかった。

そして、

次の給料日までは、

あと数日。

私はまた、

明日からどうやって過ごすかを考え始めた。

そこで、

強く思った。

もっと返しておけばよかった。

700,000円を当てても、

結局、

私は元いた場所に戻っていた。

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