700,000円を当てたあとも、
私は地方競馬を続けた。
翌日も、その次の日も。
何度か大きく当たった。
それでも、
残高は減っていった。
記憶では、
2週間から3週間ほどだったと思う。
気づけば、
また金がなかった。
ここでいう「金がない」は、
少し節約しよう、
というレベルではない。
明日の昼ごはんをどうするか考える。
私にとっての「金がない」は、
そこまで行く。
少し前まで、
700,000円もあったのに。
使った金のほとんどは、
地方競馬だった。
多少は借金も返した。
生活費にも使った。
パチスロも打った。
でも、
あとから強く後悔する程度にしか、
返済には回さなかった。
そして、
残高が減ってきても、
賭け金はなかなか元に戻らなかった。
理由は単純だった。
700,000円に戻したかった。
一度700,000円を持ってしまったことで、
そこが新しい基準になっていた。
それまでなら十分だった金額を見ても、
「まだこれだけある」ではなく、
「もうこれしかない」
と思うようになった。
ギャンブルをする人なら、
似た感覚になったことがある人もいるかもしれない。
小さな勝ちなら、
そこまで感覚は変わらない。
でも、
一度大きく勝つと、
その金額が頭に残る。
減ってくると、
負けているわけではないはずなのに、
取り返したくなる。
少なくとも、
私はそうだった。
残りが少なくなっても、
その中から数万円を賭ける。
当たれば、
また700,000円に近づける。
そんなことを考えていた。
今なら、
かなり無謀だったと分かる。
でも、
普段からやっていたことの、
金額が大きくなっただけでもあった。
当たることもあった。
それでも、
一度も大きく増えることはなかった。
そして、
700,000円はほとんどなくなった。
絶望した。
本来、
その700,000円は、
少し前まで持っていなかった金だった。
それなのに、
一度手にしたあとで失うと、
喪失感はものすごく大きかった。
そして、
次の給料日までは、
あと数日。
私はまた、
明日からどうやって過ごすかを考え始めた。
そこで、
強く思った。
もっと返しておけばよかった。
700,000円を当てても、
結局、
私は元いた場所に戻っていた。
