大学を卒業するころ、
借金は70万円から80万円ほどあった。
学生ローン。
モビット。
アコム。
学費の件は祖父に助けてもらったものの、
こちらの借金は誰にも話していない。
そのまま私は、
社会人になった。
就職先は、
パチンコ業界だった。
正確には、
パチンコ店で働く仕事ではなく、
業界で使われる設備を開発する会社だった。
なぜその会社を選んだのか。
理由は分かりやすい。
パチンコが好きだったから。
就職活動にも、
そこまで長い時間をかけた記憶はない。
比較的あっさり就職先が決まった。
正社員。
フルタイム。
初任給は22万円ほどだったと思う。
学生時代より、
当然収入は増える。
これで借金がすぐ片付く、
とまでは思っていなかった。
でも、
少しは楽になるだろうとは思っていた。
入社すると、
最初の1か月は研修だった。
会社が持っている施設に泊まり込み、
同期と一緒に生活する。
その後は、
現場を知るために営業所で3か月ほど研修。
本社に配属されたのは、
入社から4か月ほど経ってからだった。
学生時代と比べると、
一日の自由時間は明らかに減った。
研修がある。
仕事がある。
残業する日もある。
以前のように、
好きな時間にパチンコ屋へ行けるわけではない。
だからといって、
ギャンブルをする時間が減ったわけではなかった。
やり方が変わった。
仕事の休憩中に、
地方競馬を買う。
仕事中でも気になれば、
トイレで結果を確認する。
パチンコ屋に行けないぶん、
スマホで買える地方競馬は都合がよかった。
時間が限られたことで、
以前より買う頻度や、
一回あたりの金額が上がっていた時期もあったと思う。
仕事をしている時間と、
ギャンブルをしている時間が、
完全に分かれていなかった。
仕事が終われば、
パチンコやスロットへ行くこともあった。
しかも業界柄、
同期もパチンコやスロットに興味がある。
一緒に打ちに行くこともあった。
学生時代は、
ギャンブルをしていること自体は普通でも、
借金については隠していた。
社会人になっても、
そこは変わらなかった。
周りから見れば、
パチンコが好きで、
仕事終わりにも打ちに行く新入社員。
その程度だったと思う。
その裏で、
すでに何十万円もの借金があった。
妙なところでは、
金を使わないこともあった。
研修中、
同期から夜の店に誘われることもあった。
でも私は行かなかった。
単純にあまり興味がなかったのと、
そんなことに金を使うのはもったいない
と思っていたからだ。
今考えると、
かなり都合のいい金銭感覚だった。
ギャンブルには何万円も使う。
でも、
自分が価値を感じないものには、
数千円でももったいないと思う。
浪費そのものが好きだったわけではない。
ギャンブルにだけ、金銭感覚が壊れていた。
そして、
社会人になったことで変わったものが、
もう一つあった。
私の収入だけではない。
金融会社から見た、私の信用だった。
学生だったころは、
アルバイト。
それが、
正社員になった。
入社してまだ間もない。
借金もすでにある。
それでも、
それまで使っていた会社の限度額は、
また増えていった。
そして営業所で研修をしていたころには、
私は新しい借入先にも手を出していた。
大学時代、
三社から借りていた私は、
「もうこれ以上、新しいところからは借りられないだろう」
と思っていた。
その予想は、
まったく外れていた。
社会人になってからの借金は、ここからさらに加速していく。
