その日も、私は5スロを打っていた。
そして普通に負けた。
いくら持ってホールへ行ったのかは覚えていない。
ただ、手元には5000円くらいしか残っていなかったと思う。
このまま5スロを続けることもできた。
そのまま帰ることもできた。
でも私は、別のことを考えた。
20スロなら、当たった時にもっと大きく返ってくる。
それまで20スロは怖いと思っていた。
1000円なんて、あっという間になくなる。
学生の自分が打つものではない。
そう思っていた。
でも、すでに負けていた。
そして手元に残っている金も少ない。
「このままじゃ取り返せない」
そんな気持ちになった。
そこで初めて、20スロの台に座った。
今考えると、この時点ですでに考え方がおかしい。
金が減ったのなら、普通は使う金額を減らす。
でも私は逆だった。
負けたから、
もっと大きく賭けて取り返そうとした。
そして。
これが、うまくいってしまった。
正確な枚数までは覚えていないが、1000枚くらい出たと思う。
20スロなので、金額にすると2万円前後。
学生だった私にとっては十分大きな金額だった。
さっきまで負けていた。
手元には5000円くらいしかなかった。
それが、短い時間で一気に増えた。
嬉しかった。
そして同時に、こんなことを考えた。
「これ、5スロだったら5000円くらいにしかならないのか」
20スロなら約2万円。
5スロなら、その4分の1程度。
同じように当たって、同じくらいメダルが出ても、金額は全然違う。
それまで私は、
20スロは金が減るのが早くて怖い。
そう考えていた。
でもこの日、
「増えるのも早い」
ということを知ってしまった。
もちろん、この日を境にいきなり毎日20スロを打つようになったわけではない。
当時の収入を考えれば、まだ5スロを打つことのほうが多かった。
20スロはやっぱり怖かった。
ただ、
「負けた時は、20スロで取り返せるかもしれない」
という経験が残った。
これはかなり厄介だった。
もしこの日、残っていた5000円もそのまま全部なくなっていたら。
「やっぱり20スロは怖い」
で終わっていたかもしれない。
でも実際には逆だった。
負けている時にレートを上げた。
そして取り返した。
つまり私の中では、
間違った行動に、成功体験がついてしまった。
ギャンブルでは、こういう経験が妙に記憶に残る。
普通に負けた日のことは忘れていく。
でも、
負けていたのに最後に大逆転した日。
残り少ない金から取り返した日。
そういう日は、いつまでも覚えている。
そして次に負けた時、
「あの時も取り返せた」
と思う。
この日の私も、そうだった。
まだ借金はしていない。
5スロを中心に遊んでいる学生だった。
それでも、
負けたらやめるのではなく、
負けたらもっと大きく賭ける。
その選択肢を、私はこの日覚えてしまった。
そして当然。
そんなことが毎回うまくいくはずはなかった。
