第9話 閉店まで1時間でも、パチンコ屋へ走った

アルバイトが終わるのは、夜10時ごろだった。

私が住んでいた地域のパチンコ店は、夜11時に閉まる。

普通に考えれば、そこから行ってもほとんど打つ時間はない。

それでも、金がある日は店へ向かった。

バイトが終わったら急いで着替えて、パチンコ屋へ行く。

閉店まで、せいぜい1時間。

移動時間を考えれば、それより短い日もある。

それでも行きたかった。

むしろ、その1時間のためにバイトを頑張っていたところすらあった。

閉店作業が早く終われば、それだけ長く打てる。

だから仕事の終盤になると、

「早く終わらせよう」

と動く。

仕事に対するモチベーションとしては、妙な話だと思う。

ただ、当時の私にとってはかなり分かりやすいご褒美だった。

バイトが終わったら、パチンコ屋に行ける。

金さえ残っていれば、それでよかった。


バイトにはかなり入っていた。

そのため、給料日にはそれなりの金額が口座に入る。

給料日前は金がない。

だから給料日は待ち遠しかった。

ただし、

「これで借金を返せる」

と待っていたわけではない。

まず考えるのはギャンブルだった。

給料が入った。

今日は打てる。

そちらが先だった。

返済は、そのあとでいい。

当時借りていた学生向けローンは、返済するために店舗のATMまで行く必要があった。

しかも、いつでも利用できるわけではない。

営業時間がある。

学校やバイトもあるので、

「今日は行けないから、また今度」

となることもあった。

もっとも、営業時間だけが原因だったわけではない。

本当に返済を最優先にしていたなら、時間を作って行っていたはずだ。

単純に、優先順位が低かった。

ギャンブルには、バイトが終わった夜10時からでも行く。

返済は、

「今日は時間がない」

で後回しにする。

自分でも分かりやすいくらい、順番がおかしい。

そして当然、先に金を使えば残高は減る。

返済に行こうと思ったころには、

「返す金が足りない」

ということもあった。

給料が入ったばかりなのに、もう金の心配をしている。

そんなことを何度も繰り返した。


このころの私は、

「たくさん働けば、その分だけ金に余裕ができる」

という生活ではなかった。

働けば働くほど、使える金が増える。

使える金が増えれば、それだけギャンブルができる。

そんな感覚に近かった。

だから、シフトにたくさん入っているのに金がない。

給料日を待ちわびているのに、入ればすぐ使う。

夜10時まで働いて、そのあとわずかな時間でもパチンコ屋へ向かう。

それが特別な日の話ではなくなっていた。

金があれば、ほぼ毎日のようにギャンブルをする。

19歳のころには、それが日常になっていた。

ただ、金の使い道はギャンブルだけではなかった。

バイトが終われば、そのまま仲間と遊びに行くこともある。

そして私は、

そこで素直に

「金がないから行けない」

と言える人間でもなかった。

次の話では、そのころの人付き合いと金の話を書こうと思う。

← 前の話 連載一覧次の話 →

タイトルとURLをコピーしました