第32話 「祖母に返してもらいました。もう返済不要です」とLINEが来た

友人から借りた20万円。

就職してから、

毎月少しずつ返していた。

でも、

残りが十数万円になったころ、

返済が止まった。

催促のLINEも、

無視するようになった。


返済日は、

確か毎月27日ごろだった。

給料日の翌日あたりに、

設定していたと思う。

そして、

ある月の返済日を過ぎた。

翌日か、

翌々日だった。

友人から、

LINEが来た。

内容は、

かなり短かった。

「おばあちゃんに返してもらいましたので、もう返済不要です」

そんな内容だった。


見た瞬間、

血の気が引いた。

借用書には、

確かに書いていた。

返済が滞った場合は、

祖母に連絡してもいい。

しかも、

「1日でも遅れたら」

という条件だった。

だから、

友人は約束を破っていない。

むしろ、

書いてある通りにしただけだった。


それでも、

私は勝手に思っていた。

そんなにすぐ連絡するものなのか。

何回か返済していた。

それまでは普通に仲も良かった。

だから、

祖母への連絡は、

本当にどうしようもなくなったときの、

最後の手段くらいに考えていた。

でも、

友人からすれば、

私は催促を無視している。

いつ返すのかも分からない。

しかも、

年末だった。

向こうにも、

金が必要だったのかもしれない。

今になれば、

仕方なかったと思う。


友人は、

祖母と駅で待ち合わせをして、

残っていた十数万円を、

受け取ったらしい。

祖母自身に、

それだけの収入があったわけではない。

結局、

祖父が働いて得た金から、

支払われたのだと思う。

また、

祖父母に金の問題を持ち込んだ。


当然、

そのあと、

祖父母から電話が来た。

何度も。

何度も。

でも、

私は出られなかった。

出れば、

何を言われるか分かっていた。

それ以前に、

顔を合わせるのが怖かった。


ちょうど、

会社も年末年始の休みに入る時期だった。

私は、

自宅に帰らなかった。

仕事の都合で、

会社の施設に使える部屋が一つあった。

本来、

長期間使うような場所ではなかった。

それでも私は、

そこに泊まり続けた。

10日くらい。

もしかすると、

それ以上だったかもしれない。


家に帰れない。

祖父母からの電話にも出られない。

友人にも、

共通の友人にも連絡できない。

それでも、

借金そのものが消えたわけではない。

友人への十数万円が、

祖父母への十数万円に変わっただけだった。


少し前まで、

私は、

金がなくなれば、

次に金を作る方法を探していた。

でも、

このころになると、

金の問題から逃げるために、

帰る場所まで変えるようになっていた。

借金は、

財布の中だけの問題では、

なくなっていた。

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