第34話 1,400円が700,000円になった

祖母に友人への借金を返してもらい、

年末年始に家へ帰れなくなった。

そのあとも、

生活は大きく変わらなかった。

仕事をする。

金があれば、

競馬やパチスロをする。

金がなくなれば、

またどうにかして作る。

そんな日々が続いていた。


2018年6月4日。

私は、

最寄り駅近くのパチンコ店にいた。

打っていたのは、

4円パチンコのシンフォギア。

その日の大井競馬も、

当然のように買っていた。


当時の大井は、

私の感覚では、

かなりインが有利な馬場だった。

そこで最終レースは、

1着に逃げそうな馬を固定した。

ここは、

かなり勝つと思っていた。

3着には、

人気はなかったものの、

インでうまく立ち回れば残れると思った馬を固定。

問題は、

2着だった。

誰が来るか分からない。

だったら、

この馬場をうまく使って、誰か突っ込んできてくれ。

そんな予想で、

2着を広く買った。

三連単の購入金額は、

1,400円。


結果は、

その形になった。

2着に、

人気のない馬が入った。

払戻金は、

700,660円。


画面を見た瞬間、

テンションが跳ね上がった。

うおおおお。

そして、

すぐに思った。

パチンコなんかしてる場合じゃねえええ。

さっきまで打っていたシンフォギアなんて、

どうでもよくなった。

一度の競馬で、

約70万円。

普段、

数千円や数万円を作るために、

あれだけ色々なことをしていた自分に、

突然、

まとまった金が入ってきた。


最初に思ったのは、

意外にも、

これで借金を返せる。

だった。

家に帰って、

少し返済計画を立てた。

どこに、

いくら返すか。

ざっくり計算してみた。

そして、

気づいた。

全然足りない。


それまで私は、

自分がいくら借りているのかを、

きちんと把握していなかった。

70万円もあれば、

かなり整理できると思っていた。

でも、

実際に並べてみると、

そうではなかった。

だから、

私はまた、

都合よく考えた。

だったら、もう少し増やせばいい。


今なら分かる。

そこで、

70万円を返済に回せばよかった。

全部足りなくても、

減らすことはできた。

少なくとも、

生活を立て直す方向へ、

一歩進むことはできた。

でも、

私はそうしなかった。

70万円では足りない。

だから、

競馬でもっと増やす。

続ける理由が、

またできた。


しかも、

払戻金は、

ネット投票の口座に入ったままだった。

わざわざ現金を下ろす必要もない。

画面上に、

大きな残高がある。

そのまま、

次の馬券が買える。


70万円を当てたのは、

その日の最終レースだった。

その夜は、

一応、

返済のことを考えた。

でも、

翌日の午前中には、

もう馬券を買い始めていた。


この日の三連単は、

1,400円だった。

でも、

70万円を手にした翌日から、

私の賭け金は、

はっきり変わっていく。

金が少なければ、

小さく賭ける。

金があれば、

大きく賭ける。

昔から、

私はそういうタイプだった。

そして今度は、

手元に70万円あった。


大勝ちしたことで、

借金から抜け出すチャンスを得た。

でも同時に、

これまでより大きく賭けられる金も手に入れた。

私が選んだのは、

後者だった。

← 前の話 | 連載一覧 | 次の話 →

タイトルとURLをコピーしました